第344回  血と骨 - 6 色の足し算引き算

第340回 「血と骨 - 5 色の話」 より続く

 さて、少し間が空いてしまいましたが、決して忘れてはいません。イカの青い血の話です。「種とは何か?」と言った小難しい話がログのコーナーで進んでいたので、更にややこしい話は少し控えていました。

 では、ここで少し復習です。イカの血のお話の前に、まず、「色が見える仕組み」を調べました。そこで、前回は、

  〕諭垢平Г慮を合わせると白色光になる
 ◆(篆Т愀犬砲△2色の光を混ぜるだけでも白色光になる

ことを手作り実験と共に確かめました。





(カラーサークルの向かい合う色が補色)

 そこで、まずこの1番目。種々の色の光を混合すると白色になると言う仕組みを考えます。人間が色を感じる事が出来るのは網膜上に色センサー(錐体細胞)を持っているからです。このセンサーには3種類あり、それぞれ「青」「緑」「赤」の光を感じる事に特化されています。そして、種々の色の光が一斉に眼の中に入って来て 3 種のセンサーが等しく刺激された時、「白色」と感じるのです。世の中に溢れている様々な光はこの3種のセンサーの信号の足し算として脳に送られて我々はそれを「色」として感じています。各センサーの守備範囲とする光の波長を下に挙げました。(nm = ナノメートル = 1/百万 mm)

 更に、この図を用いれば、上記の2番、補色同士の混合光を我々はなぜ白色と感じるのかと言う事も説明できます。

 単純な例として、黄色(波長580nm)と青紫(波長440nm)の2種の補色光が同じ強さで網膜に当たった場合を考えてみましょう。その時、網膜上のセンサー(錐体細胞)が感じている光は下の図の様になっている筈です。

 まず、黄色の光は、赤センサーをRの強さだけ、緑センサーをG1の強さだけ刺激する事になります。一方、青紫の光は、緑センサーをG2分、青センサーをB分刺激します。その結果、この2種の光は3種のセンサーを

  赤センサー: R
  緑センサー: G1 + G2
  青センサー: B

の強さだけそれぞれ刺激する事になります。そこで、この3種のセンサーの感じた刺激の強さを比べるとどれもほぼ同じ強度である事がわかります。つまり、眼に入った光は2種の波長しかないにもかかわらず、白色光の様に3種のセンサーを同じ強さで刺激するのです。よって、我々はこの補色混合光を白く感じると言う訳です。

 試しに、もう一組別の補色の組み合わせ、赤(波長640nm)と青緑(波長495nm)の混合光が網膜に当たる場合を考えてみましょう。

この場合も、上と同様に考えると、3種のセンサーへの刺激の強さは

  赤センサー: R1 + R2
  緑センサー: G1 + G2
  青センサー: B
 
となり、この場合もどれもほぼ同じ強度の刺激を感じる事になり、脳は白色光と判断することになります。

 さて、以上は言わば「光の足し算」のお話でした。でも、「足し算」があれば「引き算」もあると言うのが世の常です。

 今、様々な色の混合光よりなる白色光から黄色の光だけを除く事が出来るフィルターあったとします。では、このフィルターを通過した光は一体何色に見えるでしょうか。これは、下の様に考える事が出来ます。

 今、白色光を下の様な10色の混合光とします。

  白色光 = 赤紫 + + + + 黄緑 + + 青緑 + + 青紫 +

ここから、フィルターで黄色だけを除いたとすると、

  白色光 - = 赤紫 + + + 黄緑 + + 青緑 + + 青紫 +

となります。この右辺を並べ替えると

  白色光 - = (赤紫+) + (+青緑) + ( +) + (黄緑+) + 青紫

とまとめる事が出来ます。この4つのカッコで囲まれた色はそれぞれ補色の関係にあるので、その混合光は白色光になる筈です。すると、

  白色光 - = 白 + 白 + 白 + 白 + 青紫

  白色光 - = 青紫

となって、結局、青紫の色だけが残る事になるのです。つまり、白色光から黄色光だけを除くとその補色である青紫色の光が見えるのです。これは、この色の組み合わせだけでなく一般論として言えます。

  「白色光から特定の色だけを除けば、その補色となる色が見える」

のであります。

 これは例えば、次の様な例で確かめる事ができます。ニンジンのオレンジ色の元となっているのはβカロチンと呼ばれる色素です。

 この色素に白色光が当たった時には、波長450nm 付近の光(青〜青紫)を強く吸収します。と言う事は、上の規則通りであるとするならば、この色素はその補色である黄橙色に見える筈です。そう、正しくニンジンの色ですね。

 イカの血とは何だか全く関係なさそうな話の展開ですが、ここまで色の知識をまとめて、次回から愈々血の話題に突入です。


参照:

第346回 「血と骨-6 鉄の色」に続く

2009/05/26 記

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