第218回 私の貝は左きき

第217回 「コリアン・ハマグリ」 より続く


 まあ、しょぼくれたオヤジの手です。ピアニストの様な繊細さはなく、職人の様な逞しさもなく、保母さんの様な優しさもありません。歴史も未来も感じられない手相です。いやいや、中年のそんな繰り言を聞いて頂こうというのではありません。

 二つで一組になるものには、それぞれを区別する呼び名があります。手ならば右手と左手。動物の足ならば前足と後足。ホヤならば入水管と出水管。入り口と出口、上着と下着、上り列車と下り列車、右大臣と左大臣、内宮と外宮、前門の虎・後門の狼、などなど。


 さて、そこで問題です。上はシナハマグリの椀物から摘み上げた一つです。当たり前ですがハマグリには2枚の貝があります。それを今、写真にあるように A、B としましょう。ではこの 2 枚をどの様に呼び分ければいいのでしょう。見た通りならば、B を「前貝」、A を「後貝」でしょうか。でも、A を手前に持って来たら今度は A が「前貝」になってしまいます。では、貝を閉じた状態で「上貝」「下貝」と呼ぶのが適当でしょうか。いや、それもひっくり返せば上下が逆になってしまいます。

 別に僕は貝殻の呼び名に興味があった訳ではありません。ただ、本シリーズのハマグリの事をあれこれ調べていて、二枚貝の解剖図の中にそれぞれの貝殻の名称が記されているのを見て驚いたのでした。


 先にご紹介したシナハマグリの場合では、A が「左殻」、B が「右殻」となっていたのです。

 「ええっ? 左右?」

どうしてAが左でBが右なのでしょう? お分かりになりますか?


 上は、先にご紹介したチョウセンハマグリです。この場合、Aでは手前が左殻、奥が右殻なのに対し、Bは手前が右、奥が左なのです。一体、それぞれはどの様な規則で決まるのでしょう。では、もう一度シナハマグリを見てみましょう。


 上は、右殻と言われている方の写真です。この時、貝の蝶番のある方が背側、手前が腹側と言われているそうなのです。腹側には人の舌のような足がベロンと出ています。そして、右側には水管があります。この場合、下が入水管、上が出水管です。

 この様に、足を手前側に水管を右側に置いたとしましょう。一方、2枚貝にはいわゆる貝柱が普通は2つあります。この2つ一組にもそれぞれ名前が付いているのです。上の写真の左側の貝柱が「閉殻筋」、右が「閉殻筋」なのです。つまり、ハマグリには左右だけでなく前後の方向も決まっているのです。


 ですから、水管のある方(後ろ)を手前に、背側(蝶番側)を上に持った時に右側に来るのが右殻、左が左殻という訳です。

 う〜ん、何だか覚え難いですねぇ。そこで、「試験に出る2枚貝」の為に、実践直前ゼミです。下の写真をご覧下さい。


 いえいえ、誤解なさらずに。これは、

 「くたびれた服の中年オヤジが股に掃除機のホースを2本挟ん
  で、両脇にダンボールを抱えた図」

では決してありませんよ。

 「水管のある方(後ろ)を手前に、背側(蝶番側)を上に持った時
  に右側に来るのが右殻、左が左殻」

です。ほ〜ら、上の忌まわしい写真と共に覚えられましたね。忘れようとしても忘れられない筈です。夢の中にも「股ぐらホース」が出て来ますよ。じゃあ、それが頭に入った所で先に進みましょう。

2006/04/04 記
   

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