| 第164回 今そこにある危機 - その1 | |
僕なんかは毎日お気楽に過ごすだけで、 「明日も今日と同じ様な一日が続くんだろう」 と何となく思っています。でも、最近の世界各地での自然災害は、足許で頭上で何事が起こっても不思議でない事を教えてくれます。もしかしたら、我々の日常生活のすぐそばにまでエイリアンが忍び寄っているのかもしれないのです。 昨年の夏の或る日の事。普段は富戸の海をスキンダイビングで泳ぎ回っているタラバブルー隊員が息せき切って遣って来ました。 「てえへんだ、てえへんだ!」 おっとこれはウッカリ八兵衛でした。 「大変だ、大変だ。海が謎の生物に占拠されつつあるぞぉ〜! 宇宙からの侵略者だぁ〜」 なんでも、見た事も無い青いオタマジャクシが水面付近に増殖しつつあるというのです。 「オタマジャクシ〜?」 なんで海にオタマジャクシが居るのでしょう。ブルー隊員の証言によると、そいつらは数ミリしかない小さな生き物で、水面付近に体を浮かべて目を凝らすと、正しくオタマジャクシの形の青い生物が尾っぽを打ち振りながら泳いでいるのだそうです。 そこで、ダイビングのEx直前に浅場で水面付近をゆっくりと泳ぎ回ってみました。でも、特別なものは何も見つける事が出来ませんでした。 「いや、そんな筈はない」 ブルー隊員は3点セットを掴むと再び海に出て行きました。そして、次に戻って来た時には小さなペットボトルを手にしていたのでした。 「海岸近くじゃだめです。50〜100m位沖に出た水面付近の方が 生息密度が高そうです。彼らはもうそこにまで迫ってるんです。 のんびりしている場合じゃないぞ!」 と海水で満たされた手の中のペットボトルを突き出したのでした。 「えっ?」 とそのボトルの中を見るのですが何も居ません。 「いや、ここです、ここ」 とブルー隊員の指差す箇所に更に目を凝らすと・・・・・ 「ああっ! 何じゃこれ〜?」 |
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確かに青いオタマジャクシに違いありません。1ミリもない小さな頭部から数ミリの尾っぽが伸びて、それがフリフリと盛んに打ち振られているのです。その尾っぽの部分の中央には白い筋が1本通っています。また、頭部には赤い部分も見受けられます。顕微鏡で見る限りでは目や口は認められません。こんなのが富戸の海岸のすぐ傍にまで押し寄せているのです。 「こいつらは一体何なんだ・・」 最初に、 「もしや・・・」 と思いついたのはホヤの幼生でした。 岩場にくっ付いているホヤは、単なる小さな筒或いは袋にしか見えませんが、魚類よりももっと人類に近い生物だと言われているのだそうです。それもこれも全ては彼らの幼生期の形にあります。 岩にくっ付いているのはホヤの成体であり、子供の時代にはオタマジャクシの形をして水の中を泳ぎ回っているのだそうです。そして、その尾っぽの部分に脊索と呼ばれる軸を持っています。幼生の時代にのみ見られるこの脊索こそが脊椎の原始的な姿だと考えられているのです。そう、ホヤこそは脊椎動物の一歩手前の生き物だったのです。 確かに今回の青いオタマジャクシも尾っぽの部分に、正しく背骨の様な白い筋が見えます。 「これがホヤの幼生なのか?」 でも、これまで実際に見た事がないので自信が持てません。それによくよく調べてみると、少し妙な点があります。 ホヤの幼生は普通1〜2ミリ程度の大きさなのだそうです。でも、今回のオタジャマクシは4ミリはありそうです。更に、ホヤの幼生では尾っぽを波打たせる動きは長続きせず間欠的なのだそうですが、こいつは始終フリフリしています。また、本に出ているホヤの幼生の写真は、今回のオタマジャクシの様なきれいな青色はしていませんし、形も少し違うように見えます。 あ〜、もたもたしては居られません。地球侵略の魔の手はすぐそこにまで迫っているのです。 (つづく) |
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参照: ・「日本動物大百科」無脊椎動物、西川輝昭、平凡社 ・「動物達の地球」 vol.67、沼河内隆晴 ・「ホヤの生物学」 佐藤矩行、東京大学出版会 |
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2005/02/15 記 |
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