第98回  モラ・デ・ココ


 さて、これは、去る6月に富戸を訪れた「さかな君」です。お仕事でのダイビングだったのだそうですが、さすがダイバーには大人気で、温泉丸で色んな人から、

 「一緒に写真に入ってもらえますか」

なんてお願いされていました。でも、嫌な顔一つせず、テレビで見る通りのハイテンションで笑顔を振りまいていました。

 さかな君が凄いと思うのは、魚についての知識だけでなくその舌です。すり身をてんぷらにした5種のイカの名前をすべて言い当てていたのを「テレビチャンピオン」で見た時には腰を抜かしてしまいました。

 あ、いやいや、今日はさかな君の話ではありませんでした。
 彼が、以前、ある新聞のコラムに書いていたお料理の話なのです。

 レシピの簡単な紹介のあとに、

 「皆さんも一度試して下さいね」

と書いてあったのですが、それが、

 「そんなの、どうやって試すんじゃい!?」

といった内容だったのです。
 ところが、それを試す日が遂に遣ってきました。


 さて、上の写真は何だかお分かりでしょうか。白っぽい肉が3cm程の厚手の皮で覆われています。
 実は、これ、マンボウなのです。そう、今日はマンボウのお話です。

 この日、夏にしては珍しく、定置網でマンボウが揚りました。いつもの様に舟の上でサッと捌いて身と肝が取り出されました。残った皮や頭は普通、そのまま海に捨てられてしまいます。が、ちょっと待った〜〜っ。

 「皮を下さ〜い、皮を下さ〜い」

岸壁から舟に向かって叫びます。

 「えっ? 皮? そんなのどうするんだ?」

と周りの漁師さんたちも怪訝な表情です。それで、切り取ってもらった頭の部分の皮が上の写真なのです。身もたっぷり付いています。
 値をつける係の方も、一体幾らにして良いのか困惑気味ですが、これで700円でした。


 さて、身は簡単に捌いてお刺身にしました。獲れたてのマンボウを醤油とワサビで・・・。ウ〜〜ン、イカとも貝ともつかない様なこのシコシコとした食感が何とも言えず美味しいですねえ。

 オッと、いけない。今日は身が目的ではないのです。皮です、皮。


 3cm程の厚い皮の最表層にはサメの様な硬くてザラザラした表皮がついています。これは食べられそうにありませんが、簡単に切り落とせそうにもありません。


 そこで、かまぼこの様に短冊状にまず切り、その後、表皮を包丁で落としました。残った白い部分はかなり硬く、力を入れないと包丁の歯が立ちそうにありませんでした。


 続いて、これを茹でます。今回は水から茹でてみました。グツグツ言い出して3分ほどしてから、この身に箸を刺してみると、何と、先ほどの硬さは何処へやら、一挙に軟らかくなっているではないですか。


 「おっと火を通しすぎたのかな」

と慌てて湯から上げました。するとどうでしょう、先ほどまで真っ白だった皮が半透明になって、しかもグニャグニャです。手ですくうと千切れそうに感じるほどです。

 続いて、これをこのまま冷蔵庫へ。
 そして、待つこと数時間。取り出したマンボウの皮は程よく固まってプルプル状態です。


 これに、きな粉と黒蜜をかけて出来上がりです。そう、今回は、マンボウの皮で作る夏のデザートだったのです。

 「一体、どんな味が・・・」

と口に入れると、

 「ほほ〜〜っ」

魚の臭みや脂っこさは全くありません。噛み切るときの食感は葛きりの様、いや、もう少しモチッとした粘りがあるところは「ナタデココ」と言う方がピッタリしています。

 「これは、確かにデザートに最適だなあ」

その場に居たダイバーの方々にも分けてあげたのですが、勿論、これがマンボウだなんて気付く方はおられませんでした。

 「いける、これはいけるぞ」

本来捨てる材料を使って出来る、海辺ならではのデザートです。こりゃあ、売れるかも・・・。

 商品名も勝手に決めました。マンボウ(学名:Mola mola = モラ・モラ)にちなんで 「モラ・デ・ココ」 です。早速、登録商標を申請しておかなくっちゃ。

港の情景 第443回 「10年のスイーツ」に続く

2003/08/04 記

         

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