2007年 5月の扉  カワハギの産卵

 当サイトでは、富戸の海の生き物の産卵行動を度々取り上げて来ました。でも、そんな事に興味を持つようになったきっかけの一つがもう10年以上前、中村宏治さんがテレビで紹介していた「脇の浜でのカワハギの産卵」でした。普段どこででも見掛ける魚なのに、

  「いつも潜っている海にこんなに面白いストーリーがあったのかぁ」

と驚いたのでした。特に、カワハギは日中に堂々と産卵しているので、それまでのダイビングでも僕はそんな動きをきっと目にしていたに違いないのです。違いないのに全然気が付いていなかったと言う訳です。

  「見えているのに見ていない事がいかに多いことか」

を改めて思い知ったのでした。

 そんな思い出があったからと言う訳ではないのですが、

  「産卵行動の中で一番面白い魚は何ですか?」

と訊かれたら僕はカワハギと答えるのではないかと思います。メスを巡るオス同士の争い、メスに言い寄るオスのスケベっぽさ、2〜3匹のメスに順に求愛してるオスの身勝手さ、それに耐えてせっせと砂地の産卵場所を整えるメスの甲斐甲斐しさ、そして、放精・放卵の瞬間の迫力、その後すぐに他のメスのところへ走るオスの素早さ、そして、放卵直後のパッタリ倒れるメスの色気、そして砂の上に残る産卵の跡、どれをとってもたっぷりと感情移入出来るし、様々なストーリーが浮かびます。

  「動物の観察は擬人化して見てはいけない」

などとよく言われます。でも、冗談じゃありません。人の世のあれこれに引き寄せて考える事が出来ないならば、生き物の世界は何と色褪せて見える事でしょう。僕はこれからも臆する事なくドンドン擬人化です。何なら一匹ずつの生き物に吹き出しで台詞まで書き込んで歩き回りたいくらいです。

 さて、今年もまたそのカワハギの季節が遣って来ました。メスにネチネチと言い寄るオスの姿もあちこちで見られ始めました。メスの中には既にお腹がポンポコリンのものも居ます。気の早いカップルはもう産卵を始めているかも知れません。

 富戸の海は夏へ夏へと歩を進めています。

 2007/05/01 記

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