2006年 12月の扉 卵を守るセボシウミタケハゼ

 今年もあと1ヶ月になりました。月並みな言い方ではありますが、本当に1年は早いですね。おめでたく「大漁旗」の写真で新年を祝ったと思ったら、いつの間にやらもうクリスマス・ソングです。

 新聞やテレビでも「2006年を振り返る」と言った言葉が躍るようになるのでしょう。そうすると、僕の頭もいつしか

 「あ〜、今年も色んなものを見たなぁ〜」

などと年末モードに入ってしまいます。しかし、年末なんてのは人間が勝手に決めた区切りに過ぎません。海の中の生き物はカレンダーなどとは全く無関係に日の長さや水温の変化と言った自然の印だけを手掛かりに日々の暮らしを営んでいるのです。12月になったからと言って海の中が急に静かになる訳でもなく、命を繋ごうとする生き物の営みは続きます。

 上の写真は、年末になっても卵を産み育てていたセボシウミタケハゼです。カイメンに産み付けられた1mmにも満たない透明な卵の中では、下がり始めた水温をものともせずドックンドックンと小さな心臓が脈打っている事でしょう。これらの中には12月25日に孵化するものも居るに違いありません。でも、それらの殆ど全ては「救世主」になどなる事もなく、いやそれどころか5mm程にも育つ事もできずに他の魚に食われてしまうか死んでしまうのです。それでも、セボシは次の週には新たな卵を守っています。

 なけなしのお金をはたいて彼女の為に予約したクリスマス・ディナーにドキドキしている若者が笑っている夜も、K-1を見るか紅白歌合戦を見るかで家族が言い争っている夜も、真っ暗な海の中では幾つもの卵の中で一斉にドックンドックンなのです。

 2006年、どうもありがとう。

2006/12/01 記

HP表紙へ > 扉の月明かりへ > 本ページ