2006年 6月の扉 ウスバハギのペア |

| 全く初夏らしくないドンヨリした写真ですみません。これ、一昨年の6月、無茶苦茶透明度の悪かった日のものです。 さて、僕は小さい頃から、そう、小学生の頃から司馬遼太郎さんの大ファンでした。いや、別にその著作を片っ端から読んでいたとか、坂本竜馬に心酔していたとか言う訳では全くありません。あの頭髪に憧れていたのです。輝くばかりの白髪です。あの髪を見るだけで、 「ああ、この人は賢い人なんだろうなぁ。沢山の本を読んだ人 なんだろうなぁ。」 と思いませんか。何事も見た目から入りたがる僕は、早く大人になってあんなカッコいい白髪になりたいと願っていたのでした。邪魔な前髪を書き上げて原稿用紙にペンを走らせながら紫煙をくゆらせるのです。 「かっこいい〜っ」 幸いと言うべきか、僕には若白髪のDNAがあったらしく、最初の白髪を見つけたのは中学生の頃でした。 「やったぁ〜!」 僕は大喜びでした。このまま行けば20歳の頃には司馬さんになれるのではないかと、自分なりの白髪プランを練っていました。高校に入る頃には更に白髪は増え、すべて計画通りでした。同年代の若者達が髪の毛を染める中、僕はひたすら「総白髪の日」を待ち続けたのでした。が、何故か、二十歳前で白髪化スピードは突然失速してしまいました。 「若いのに白髪の多い人」 のままでストップしてしまったのです。それ以降、頭の前部を中心に少しずつ白髪は増えたのですが、40を過ぎても所詮白黒半々程度です。 「だめだぁ、当初のスケジュールから大幅に遅れてる」 そんな或る日、職場の若い人がすれ違いざまにふと漏らしたのです。 「あのぉ、この頃少し髪が薄くなりつつあるんじゃないですか?」 ええ〜〜っ?! いや、もういい歳なんだから髪が抜けようが減ろうがそれはもういいのです。ただ、その言葉が「総白髪不可能宣言」に響いたのでした。無理なのか? 僕にはあの「白髪掻き上げの渋い眼差し」はもう無理なのか? ショックぅ〜。 |
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さて、話を戻して。上の写真は一昨年の6月のものです。ウスバハギと言えば冬の魚というイメージです。それなのに、この日は初夏の浅場でしかも2匹がホバリングしていたのです。手前の、恐らくオスと思える個体はしばしば体色を変えてもう1匹の周りをネチネチまとわり付いています。ウスバハギはある程度以上はダイバーを寄せない魚なのですが、この日ばかりはかなり無防備と言った感じです。 「ウスバハギの産卵は今頃なのか?」 と僕は色めき立ち、数十分間、傍で成り行きを見守ったのですが、残念ながらそれ以上の進展がないままエアー切れとなってしまいました。 でも、あれは何かあるに違いありません。そこで、Exit してから温泉丸で 「今、ウスバハギがね」 と興奮気味に話始めたのです。すると、傍に居た知り合いのガイドさんが、 「えっ? 『うすら禿げ』?」 と慌てた様に振り返ったのでした。確かにその方は、最近ちょっと頭が寂しくなり始めていました。 この写真を見ると、その日のガイドさんの慌てぶりと、総白髪への夢が断ち切れぬ僕の思いが交差して脳裏をよぎるのでした。 |
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2006/06/01 記 |