富戸でナベアツ (2008/06/22)

2008/06/21 「富戸のボツ」 より続く

  「潜ってしまえば天気なんて関係ない」

とはよく言われますが、梅雨時の1日中降り続く雨はやはり鬱陶しいものです。


 月日: 2008年6月22日(日)
 天候: 雨
 気温: 21〜22℃
 水温: 17〜20℃
 透明度: 5〜12m
 海況: 穏やか
 潮回り: 満潮 = 19:43(145cm)  干潮 = 12:33(13cm)
       月齢:18  中潮

 さて、この週末は、

  6月21日(土) 月齢:17
  6月22日(日) 月齢:18

と、クサフグの産卵を狙うには絶好の暦となりました。でも、暦の巡り会わせが幾ら良くても肝心のクサフグにその気が無いのでは何の意味もありません。そこで先週末、浅場のクサフグを見て回ったのですが、お腹がポコリンと膨れた明らかにメスと思われる個体を何匹か見つける事が出来ました。

  「これは、今年こそ期待できるんじゃないだろうか」

と、21日には、まなじりを決して富戸に臨んだのでした。

 まず朝一番に水深1m付近の浅場を泳ぎ回ってみました。すると、

  「おっ、居る居る」


2008/06/21 朝 ヨコバマ 水深1m

 ざっと300匹近くのクサフグが泳ぎ回っていました。中にはお腹がいびつに膨れた個体もいます。

  「う〜っ、今年は久しぶりに行ってくれるんじゃないの〜?」

とテンション急上昇なのですが、いやいや慌てるな。昨年も、そこそこの数のクサフグが集まっていながら結局産卵は見られませんでした。今はただ、心静かにその時を待つと致しましょう。そこで、この日は午後のダイビングを早々に切り上げて、4時頃から産卵場所と思われる岩陰に身を潜めました。当然この日も僕とイエロー隊員の二人の姿しかありません。他の方々の頭には「クサフグの産卵」なんて最早ないのでしょう。

 日中ザーザー降っていた雨も我々が浜に現れた頃にはピタリと止んで、海面もベタベタの凪状態になりました。何だか我らの前途を祝して呉れている様にも思えます。

  「来るかな?」
  「う〜ん、来て欲しいなぁ」

波の音だけが繰り返す海岸に、我々の囁き声だけが響きます。そうして、打ち上がり予想時刻の 4:30 を迎えました。しかし、波打ち際にクサフグの陰がチラホラ見えるものの、海岸の岩に乗り上げている個体はまだ何処にも見られません。

  「今年も、ここまでなのか?」

の不吉な疑念を打ち払って一層目を凝らします。そうして、午後4時40分。

  「来たっ」

イエロー隊員の声が上がりました。その指差す先を見ると、波打ち際の岩に1匹のクサフグが挟まって体を揺らしていました。


2008/06/21 16:40 打ち上がり開始

  「よ〜〜しっ、来た来たっ」

3年ぶりの高揚感です。そこで改めて付近を見渡すと、少しずつ打ち上がったクサフグの姿が見られる様になって来ました。

 恐らく、最初はオスが打ち上がって、メスが遣って来るのを待っているのではないかと思います。始めに打ち上がった個体の動きは比較的緩慢で、「その時」が来るのを待ち受けている様に見えます。やがて、波に乗って次々と個体が集まって来ます。その中の大きな個体が恐らくメスと思われます。やがて、プリリンッと体を振るとまっ黄色の卵が産み出されます。するとたちまち回りのオス達がバチャバチャッと跳ね回ると共に放精して水は白く濁るのです。と思ったら次の波が来てそれらを全てかき回して沖へと運んで行くのでした。産卵開始です。時刻は午後5時丁度。


2008/06/21 17:00 産卵開始(黄色の帯が卵塊)

 クサフグ達が揃ってバチャバチャッと跳ねる瞬間は、何度も見ているにもかかわらず、

  「ウォオオオオッ ワワワワッ」

と喚声を上げてしまいます。こうして、「初夏の夕べの夢」とも言うべきクサフグの産卵の火蓋ががいよいよ切って落とされました。

 では、コンパクト・デジカメのおまけに付いているビデオではありますが、興奮の一端をご覧下さい。

クサフグの産卵 (Windows Media 8.6MB)

 このビデオの最後の場面について。これまで富戸で見て来たクサフグの産卵の時には、ウツボが必ず同じ様に波打ち際にまで上がって来ました。そして、岩の間で身動きできないクサフグを易々とくわえて行くのでした。

 1日の産卵で、いつも数匹はあの毒牙に掛かっています。動かない相手ですから、ウツボにとってこんなに楽チンな獲物はないでしょう。ウツボに狙われて逃げおおせたクサフグをこれまで見た事がありません。でも、そんなウツボの動きからこんな事が言えそうです。

 さて、産卵は続きます。2004年の大産卵の時と比べると規模はかなり小さくなっていますが、1匹1匹のクサフグにとっての必死さには変わりがある筈はなく、やはりこちらの胸を熱くさせるのでした。ですから、4年前と変わることなく、

  「ウォオオオオッ ワワワワッ」

と叫びながらあちらの岩陰からこちらの岩陰へと飛び回っていました。この日は他に誰も居ないので、二人っきりで見放題です。

  「ざまぁ見ろっ!」

と誰にともなく言いたい思いでした。我々が注意していなければ誰も聞く事がなかったクサフグの声を確かに受け取る事が出来たのが本当に嬉しかったのでした。

「ほらっ、ここにも沢山集まってる。1匹、2匹、さ〜ん匹、4匹、5匹、ろ〜く匹」

と、3の付く数字と3の倍数の時だけアホになって僕はクサフグを数えました。

 こうして、さ〜ん年振りに見るクサフグの夕べは静かに暮れて行くのでありました。

 (ちなみに、翌 6月22日 にもクサフグの産卵は無事見る事ができました。クサフグ・シーズンのいい滑り出しです)

2008/06/27  記

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