富戸のタコ糸 (2008/03/22)

2008/03/16 「富戸のX-Day」 より続く

 折角の飛び石連休でしたが、太平洋上を通過した低気圧の影響で強い風が吹き荒れ、東伊豆は全滅状態が続き、この日漸く何とかオープンとなりました。でも、ウネウネのニゴニゴです。ダイビング・フェスティバルが重なったせいもあるのでしょう、この日のダイバーの数は驚く事に10人ほどでした。しかし、僕のフェスティバルは富戸の海で続くのでした。


 月日; 2008年03月22日(土)
 天候; 晴れ
 気温; 10〜17℃ (暖かいが風は強い)
 水温; 14℃
 透明度; 5m (深場の方が透明度悪い)
 海況; うねりあり
 潮回り; 満潮 = 10:44 (46 cm)、 干潮 = 16:47 (144 cm)
        大潮、 月齢 = 14


 ナヌカザメの卵の話が続きます。


2007/12/31

 昨年の11月下旬にヨコバマに登場したナヌカの卵の中で子ザメは順調に成長している様に見えました。ところが、それまでは卵の中で盛んに動いていた子ザメが、お正月頃から全く動かなくなってしまったのでした。日を変えて繰り返し覗いてみたのですがやはりダメ。

「うまく育ってくれていると思っていたのに、死んでしまったのかな。う〜ん、これには我々ダイバーの責任もあるのかも知れないな」

少し重い気持ちになって、それ以降この卵にはあまり近付かなくなってしまいました。

 ところがです。2月11日のこと、このナヌカの卵の傍を通り掛った時、久々にライトを照らして覗いてみました。

  「あれっ? ええっ?」


2008/02/11

 卵の中の子ザメが、年末よりも確かに成長している様に見えました。体からぶら下がっていた大きな卵黄は殆ど吸収されて無くなってしまっていました。その一方で、子ザメは体を丸く折り曲げないと卵嚢の中に収まらない程の大きさになっていたのです。この時点でもやはり卵嚢の中での動きは全く見られませんでしたが、子ザメは着実に成長を続けて来ていたに違いありません。その事は、翌週再びこの卵を見た時に確信に変わりました。


2008/02/16

 卵の中の子ザメの向きが前週とは変わっていたのです。波に揺られたり、またダイバーがちょっと触った位でこんなに動くとは思えません。恐らく少しずつ動いているか、たまにゴソゴソと姿勢を変えているに違いありません。

「そうかぁ、生きていたんだぁ! むぅ〜、『もう死んでしまった』だなんて勝手に決めてしまわずに、もう少し息長く慎重に観察していれば成長の過程をきめ細かく追うことが出来たのに〜! 残念」

 いつもの事ながら間が抜けています。でも、それは海の中での観察だけではありませんでした。中村宏治さんの「サメが生まれた」を読むと、産卵後180日の時点で、

「たまごのなかをおよぎまわることはしなくなっていました。だんだん、たまごのなかがせまくなってきたのでしょう」

と書いてあります。もっと早くからしっかり調べていれば気付いた筈です。少なくとも2月の時点では、子ザメは確かに卵嚢の中で一杯一杯と言う程度にまで大きくなっていました。容易に動き回れそうにありません。

 卵嚢の中の動きだけでなく子ザメ自身の成長にももっと注目していれば、死んでなんかいない事にもっと早くに気が付いた筈です。そこで、これ以後も卵の観察を続けながら、子ザメの成長をもっと分り易く把握できる方法を思案したのでした。

 一番確実な方法は子ザメの体重を毎週計ることでしょうが、卵嚢から子供を引きずり出して秤(はかり)に乗せることなど出来ません。次に可能なのは卵嚢の中の子ザメの体長の測定でしょう。これならば不完全ながら可能に思えました。そこで、僕は次の様な方法で子ザメの体長(全長:頭の先から尾ビレの先までの長さ)を見積もる事にしました。

 まず、定規を海の中に持ち込んで、卵嚢の縦の実際の長さ(上写真A)を出来るだけ正確に測定しました。また、これは実際には必要ないのですが、横幅の最も広い部分(B)も測定しておきます。今回の場合は、

  A: 10.8cm
  B:  6.8cm

でした。一方で、この時の卵の写真を自分のパソコンの液晶画面に映します。


卵嚢の写真のPC液晶画面

 そして、この画面上での卵嚢の縦の長さ(A')を定規で実測します。この場合には、

  A' = 12.5 cm

でした。


タコ糸で全長測定

 続いて、液晶画面に映っている子ザメの背骨に沿う様に、タコ糸をテープで止めながら頭の先から尾ビレの先まで当てます。そうして、このタコ糸の長さを改めて測ったところ、19.5cm でした。もし、全ての測定が正確に行われているとすれば、この時の子ザメの全長は、

  全長 = タコ糸 x A/A'
            =  19.5 x 10.8/12.5
            =  16.8 (cm)

となる筈です。

 そこで、昨年11月下旬にこの卵がヨコバマに登場して以来の子ザメの全長の変化を各時点での写真を元に算出してみました。縦軸に全長を、横軸に卵が登場(2007/11/23)以来の日数を取りました。

 すると、どうでしょう。あんなにいい加減な計算であるにもかかわらず、時と共に子ザメが着実に大きくなって行く様子が数字の上からも明らかに現されました。結構美しい成長曲線です。もう死んでしまったんだと勝手に思い込んでいた1月の間もそれまでと変わらぬペースで成長を続けていたのは間違いありません。ああ、1月も観察していればもっと確かなグラフになっただろうに残念です。

 ちなみに、上のグラフで表された範囲では、

  子ザメの全長(cm) = 7.394 exp (0.0087 x 日数)   R2 = 0.982

と言う関係になりました。大雑把に言えば、毎日1mmずつ大きくなっている勘定です。出現時には7cm程度しかなかった子ザメが100日掛けて17cm近くにまで成長したのです。

  むぉ〜、成長の様子がこうして分り易い形に表されるとなんだかドキドキして来るではないですか。さてこうなると次には、

「じゃあ、この成長曲線が一体どこまで延びたら、子ザメはハッチアウトするのだろう」

と言う事が気になって来ます。こうして、僕は無謀にも更なる荒波に漕ぎ出すのでありました。 (つづく)


参照:

2008/03/23 「富戸でTrain Train」へ続く

2008/03/23  記

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