2008/03/15 「富戸の胎動」 より続く
ウネウネ・ニゴニゴの翌日、海は穏やかになったものの透明度は更に低下した様に感じられました。そこら中が緑色の世界になってしまいました。
月日; 2008年03月16日(日)
天候; 晴れ
気温; 13〜19℃ (陸は暖か〜い)
水温; 14℃
透明度; 3〜5m
海況; 並
潮回り; 満潮 = 08:00 (128 cm)、 干潮 = 17:27 (32 cm)
小潮、 月齢 = 8
さて、改めてナヌカザメの卵のお話に戻ります。

2007/11/23
昨年の11月23日にヨコバマの水深 24m にナヌカザメの卵が現れました。漁の網からダイビングエリア内に移したものです。卵の中では既に子ザメが育っており、身をくねらせて激しく動き回っていました。

2007/12/15
上の写真がそれから3週間を経た卵です。ご覧頂くと、卵嚢の底にある卵黄は明らかに小さくなって、子ザメがその分成長しているのがよく分ると思います。この時点でも子供はゆっくりとではありますが動いていました。
「よしよし、育っているな」
この卵を覗きに行くのが楽しみになりました。
さて、こうなると、この卵は一体いつ頃孵るのだろうかと言う事が気になります。それを予想するには、
が分らねばなりません。そこで、手持ちの本でこの2点を調べてみました。
まず、産卵から孵化までの時間です。よく、「およそ1年」と言う話を耳にするのですが、その根拠やニュース・ソースを詳しく聞いた事がありません。
そこでまず小林安雅さんの「海中記」を見てみました。この本には産卵後間もなくの卵から孵化の瞬間までの写真が収められているのですが、恐らく水槽写真ではないかと思われます。しかしその割には、孵化までの時間については、
「約1年かけて成長し」
と書き方が何だか曖昧なのです。
次に、中村宏治さんの「サメが生まれた」。こちらは、IOP と思われる海中での追跡記録です。こちらは、卵の各成長ステージと日時が合わせて記されているので正確なデータが期待できます。これによると、産卵後間もないと思われる卵を見つけたのが
1月21日とされています。但し、産卵の瞬間を見た訳ではないでしょうから正確な日時は特定できません。でも、卵嚢の表面は真っ白で付着物もなく、内部にも卵黄しか見られないのでそれほど日が経ったものとは思えません。そこで、この卵の発見日を産卵日としましょう。そして、この卵の孵化が観察されたのが12月8日だったそうなので、産卵から孵化まで321日間、およそ10ヶ月半と言う事になります。
一方、水族館をはじめとした水槽観察ではもう少し正確な記録があります。それによると、ナヌカザメの孵化日数は
343〜424 日(11.3〜13.9ヶ月)とかなりの幅があります。これは、飼育水温などの環境条件によってかなり変動する事によるのだそうです。ですから例えば、トラザメの卵の水槽飼育記録では、孵化日数を216〜268日としている報告もあれば391〜538日としている報告もあると言う程のばらつき様です。と言う事は、実際の海の中での孵化日数など推し量りようもありません。ですから、よく言われる「およそ1年」と言うのもあながち外れてはいないのでしょう。
では、産卵から孵化までが凡そ1年として、11月下旬に見つけられた卵は果たして産後何ヶ月程度なのでしょうか。これは更に難問です。発生途中の子ザメのデータは更に希薄なのです。
まず、「海中記」を見ると、産卵後7〜8ヶ月とされる子ザメの写真ががヨコバマの11月下旬の子ザメに近い状態である様に思われました。もし、この時の子供が産卵後7ヶ月で、12ヶ月で孵化すると仮定すれば、ハッチアウトは4月下旬と言う事になります。
一方、「サメが生まれた」を見ると、産卵後100日の写真が11月下旬のヨコバマの子ザメに近い様に見えました。もしそうだとして、この本の通り産後321日で孵化すると仮定すれば、ハッチアウトは7ヵ月後の6月下旬と言う事になります。
数少ない写真を元にした大雑把な推定に過ぎないのですが、いずれにしても2008年の春から初夏が
X-Day と見込まれたのでした。
「まだまだ長い道のりだなぁ」
と思えたのですが、別の見方をすればまだまだ楽しめると言う事です。
そこで、これから後も、ほぼ毎週の様に卵を覗き続けました。しかしです。

2007/12/31
年末のお正月富戸合宿に入った頃から卵の中の子ザメが全く動かなくなってしまったのでした。上は、大晦日の日の卵の様子です。体もポッテリと太って来ているのが分ると思います。
「折角ここまで育ったのに・・ もしかして・・」
そこで、新年の元旦の日にもう一度覗いてみても、その翌日に見てみても、やはり子ザメに動きは全くなくなってしまいました。やっぱり・・
「次から次へとダイバーが遣って来てライトで照らすものだから、サメへのストレスになったのかな」
と何だか心細くなりました。丁度そのとき、同じ東伊豆のダイビングサイトである北川から富戸に遣って来ていたガイドさんからお話を伺う機会がありました。すると、北川でもナヌカの卵は時々見られるのですが、成長途中で死んでしまう場合が多いのだそうです。卵黄と子ザメを繋ぐへその緒の部分が切れてしまうんですって。
「卵をダイバーに突かれたり触られたりするのが原因なのかも・・」
との言葉を聴いてドキッとしました。毎週、卵には触らないようにしてライトで照らして撮影していたつもりでしたが、そんな行為も子ザメの命を縮めていたのかも知れません。
「申し訳ない」
そう思うと辛くなって、それ以後この卵を見る事はなくなってしまったのでした。しかし、・・・ (つづく)
参照:
2008/03/22 「富戸のタコ糸」 へ続く
2008/03/21 記
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