♪ 夏もち〜かづく 八十八夜 ♪
と言う歌は僕も知っています。そして、
♪ あれに見〜ゆるは 茶摘みじゃないか ♪
とは僕も歌って来ました。でも、小さい頃から大阪の下町のゴタゴタした所で暮らして来た僕は茶摘みなんて見た事がありませんでした。いや、それどころか、普段飲んでいるお茶が一体どうやって作られるのかすら知りません。お茶と紅茶は一体何が違うのかすら分かっていません。それでも、毎日お茶には親しんで来ました。富戸に潜りに来た時も、お昼ご飯の後はお茶です。

その一方で、これまで家庭で当たり前に飲んでいたお茶までもがペットボトルや缶入り飲料として販売されるようになり、かなりの売り上げを記録していると言います。富戸の港の自動販売機にも様々なお茶が何種類も並んでいます。
ところがですよ、良く考えてみたら伊豆半島のある静岡県と言うのは日本一の茶所ではないですか。2006年の統計では、日本のお茶の生産量の実に44%までもが静岡県によって占められており、2位の鹿児島県(25%)を大きく引き離しているのです。
「静岡の海に普段お世話になっておりながら、そんな風にお茶に無知なままでいいのか!」
と、トンチンカンなおじさんは妙にいきり立ってしまったのであります。そこでです。5月1日は時あたかも八十八夜であります。ここは、富戸で茶摘みを行い、富戸でお茶を淹れ、富戸でそれを頂いて茶所の伝統を味わおうではないかと考えた訳です。上手く行けばそれをブランド茶にまで育て上げようと言う遠大な計画であります。そこで、
「よしっ」
と力こぶは入れたものの、実は、僕はお茶の木も葉もどんなものなのか全く知りません。それが富戸にあるのかどうかすら分かっていません。でも、こんな時に頼りになるのが、カニレンジャー食品部長の重責にあるタラバイエロー隊員です。そこで、
「富戸でお茶を探せ」
の命を受けたイエロー隊員は町のあちこちを覗いて回りました。その結果、
「お茶はそこそこあるよ」
との報告をもたらしたのでした。
「えっ? そうなの?」
* * *
当たり前ですが、お茶も植物ですから、
Camellia sinensis (カメリア・シネンシス)
の学名を持っています。
「カメリアって、カメリア・ダイアモンドのあのカメリア?」
そう、お茶は椿(カメリア)の仲間だったのです。sinensis (シネンシス)とは「シナ(中国)の」ですから、お茶とは「中国椿」と言う事です。ちなみに、Camellia
(カメリア)とは、椿をヨーロッパに持ち帰ったイエズス会の宣教師 G.J. Camellus
(1661-1706) に由来するんですって。
お茶がツバキ科の木であるという事は、やっぱりツヤツヤとした葉っぱをしているのでしょうか。

まさしくその通りでした。お茶と思われるツヤツヤ葉っぱの木は富戸の家々の生垣として幾つか見る事が出来ました。

でも、どれもきちんと手入れされたものばかりで、これを見知らぬよそ者が
「ちょっと摘ませて下さい」
とは言い辛い雰囲気でした。そこで、地元のダイビング・ショップの脇に生えたお茶を目敏く見つけ、お許しを頂戴してこれを摘ませて頂くことにしました。

濃い緑の中から伸びているこの若葉色の部分が新芽です。ここが初夏の新茶になるのです。現在では茶摘みは機械で処理する場合が殆どなのですが、手摘みする場合には、この先っぽの葉っぱ2枚分だけを選んで摘んでいたのだそうです。それが一芯二葉と呼ばれ、高級煎茶や玉露になるんですって。それじゃ、素人のお遊びではありますが、高級茶を目指して我らも一芯二葉です。

一芯二葉
♪ 夏も夏もち〜かづく 八十八夜〜 ♪
富戸手拭いを被って歌いながら茶摘み作業は進みます。美味しいお茶にするぞ〜と勇む内に、そこそこの葉が集まりました。

人の家の木を摘ませて頂いているのですから欲をかいてはいけません。食後のお茶数杯を頂ける分が採れたら撤収です。
さあ続いて、富戸で飲む富戸茶の正念場である「手もみ」作業に愈々突入です。今度は富戸手拭いをきりりと鉢巻にするのでありました。 (つづく)
第301回 「八十八夜-その2」 へ続く
2008/05/13 記
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