第294回  ヒメオドリコソウ

 今年の2月の富戸は本当に寒かったぁ。久々に冬らしい冬だった気がします。海から出ると温泉丸まで小走り一直線でした。しかし、季節は確かに時を刻んでいます。港の周りはいわゆる雑草と言われる草花が季節季節に様々な顔を見せてくれるのですが、冬の間は地味に茶色っぽい姿が見えるばかりです。でも、そんな草花も春の到来を予感して新たな季節の準備を進めている筈です。そこで、

「図鑑に載っているいわゆる『春の花』の中で、港で一番最初に咲く花は何だろう?」

 ふとそう思い立って、北風がまだまだ冷たい2月初頭から港のあちこちにしゃがみ込んで春を目指す草花を毎週観ていました。すると、2月上旬頃からオオイヌノフグリとヒメオドリコソウが開花の準備を始めた様に見えました。

  「おおっ、際どい勝負になりそうだな」

2月17日にはどちらも小さな蕾を付けていました。これはゴール直前の胸の差一つの競り合いになりそうです。そして、2月23日、僕が見つけた今年最初の春の花がこれでした。そう、ヒメオドリコソウが接戦を制して一斉に花開いたのです。勝利を祝うように、踊り子たちがあちこちで祝いの舞を舞っていました。

  「くそ〜っ」

最後の追い込みで敗れたオオイヌノフグリは己の呪われた名前を嘆きながら、いつも引き立て役に回る身の上に溜め息をつくのでした。

2008/03/17 記

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