第280回  フトノトウ

 秋も深まりを見せると、港の周りの植物も夏の様な彩りは影を潜めます。しかし、秋には秋の花が姿を見せるのです。今、もっとも目に付くのはツワブキの黄色い花でしょう。

 フキの名は付くものの、これがキャラブキの蕗(ふき)とは結びつかず、単なる野草だと以前は考えていました。ところが、これも食べられるのだと教えて頂いて試してみると、

  「おお〜、上品な苦さでおいしぃ〜」

と一遍にファンになってしまったのでした。ところが、新芽を美味しく頂けるのは春だけです。黄色い花が港で目立つ今の季節は、

  「あと半年はひたすら我慢我慢」

なのです。

 ところが、先日、野草・山菜の本を読んでいたところ、このツワブキの項の中に、

  「つぼみは天ぷらに」

という記述があるのを見つけました。

  「ええっ? つぼみも食べられるの? と言う事は秋も楽しめると言う事?」

と好奇心がムクムクと一挙に頭をもたげて来ました。

 今は花の盛期ですが、小さな米俵型のつぼみもまだまだ沢山見る事が出来ます。

  「そうかぁ、これも食べる事ができるのかぁ」

これまで何の気にも留めていなかったくせに、急にしげしげと見つめる様になってしまいました。そして、

  「こんなに咲いているんだから 5〜6 個位ならいいよね」

とコッソリ頂いて帰ったのでした。


ツワブキの天ぷら(右端)

 そして、ナス、シイタケと一緒に早速天ぷらにしてみました。ちっぽけなのでお皿の上ではあまり見栄えがしませんが、果たしてその味わいはどうでしょうか。

 ちなみにこの日は、天ぷらの他に、生ガキ、ノドグロ(アカムツ;これがホックリした身で無茶苦茶美味しかった)、バッテラ(サバの昆布〆寿司)、ほうれん草のおひたし、ナメコ汁というかなり秋色の濃い食卓になりました。

  「では、いただきまぁ〜す。まずはやっぱりツワブキから」

早速、抹茶塩で頂いてみました。不安半分、期待半分で一口。

  「むぉっ、おお〜っ」

これはいい! 野草らしく苦いのですが、その苦さが心地よいのです。ちょうど早春のフキノトウに似たような味わいです。そう、秋の富戸のツワブキをこれからは「フトノトウ」と呼ぶ事にしましょう。

「苦いから美味しいなんて、ハンバーグばっかり食ってる子供には分からないだろうなぁ」

などと、唸りながら、もう少し取って来てもよかったかななどと厚かましい事を考えていたのでした。

2007/11/11 記

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