
毎年、脇の浜を望む崖にこの赤い花を咲かせます。
「一体、何ていう名の花なのかなぁ」
と草花知らずの僕には長らく謎でした。手持ちの図鑑をパラパラめくってみても見つかりません。ところが、或る時本を読んでいてこの花が「ヒメヒオウギズイセン」と言う名である事を初めて知りました。
「スイセン? これが水仙の仲間なの?」
僕が抱くスイセンのイメージからかなり隔たっている様に思えます。ところが、この花、実は南アフリカ原産の外来種なのだそうです。なるほど、道理で何処か転校生の様なよそよそしさを感じた訳です。
ところで、この「ヒメヒオウギ」の名を聞いて「あれっ?」と思いました。僕の知っている富戸の「ヒメヒオウギ」はこれです。

岩場の小さな砂溜まりの様な所に暮らしている7〜8cmの二枚貝です(この仲間にはヒナノヒオウギやヒメオウギ、ヒオウギなど似た貝が多いので同定には全く自信がありません)。二枚貝には砂の中に潜って暮らしている種が多いのであまり眼にする機会がないのですが、こいつだけは全身を露出している事が多い珍しい存在です。

足糸
そして、この仲間の大きな特徴は、貝の蝶番の付近から足糸と呼ばれる強靭な繊維状の物を伸ばして岩に体を固着している事です。ですから、一度この姿を見つけたら、暫く継続観察できます。
おっと、何だか花の話が地味な貝の話になってしまいましたね。さて、この両者が共に「ヒメヒオウギ」の名を有しているのはどういう訳なのでしょう。この名には「姫檜扇」の漢字が当てられるそうです。「姫」とは「可愛い」とか「小さい」の意味を表す時によく用いられる文字です。そこで、問題となるのは「檜扇」です。これは、檜の薄板を重ねて扇子状にした昔の扇なのだそうです。なるほど、貝の形が扇形ですね。そして、近世ではその薄板の数は普通25或いは28枚だったのだそうです。そこで面白いのは、ヒメヒオウギの貝殻に放射状に伸びているデコボコの筋は普通25本程度なのだという事です。「檜扇」を名乗る以上そこまでキッチリ数を合わせて来たのですね。なんて律儀な貝でしょう。
それに引き換え植物の「ヒメヒオウギ」。花を見ても、葉を見ても今一つ扇がイメージできません。もう少し、貝の律儀さを見習ってほしいものです。
2007/10/06 記
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