第269回  NC温泉 - その2

第270回 「NC温泉 - その1」より続く

 さて、数値制御(NC)化されても温泉丸の悩みは尽きません。熱い断熱材で包まれた輸送パイプが施されて以降、蛇口から噴き出す温泉の温度が熱過ぎる様になってしまったのです。それゆえ、今度は水で埋めねば成らなくなりました。この為に使用される水の量と言うのがバカにならなず、経済的にもかなりの痛手なのだそうです。そりゃあ、そうですね。そのままでも飲める水を単に温泉を埋める為だけに出しっ放しにするのですから。

 そこで工作好きのタラバブルー隊員が腕を揮ったのでした。が、それは容易な事ではなかったようです。よくシャワー・ルームで見掛けるような温度を設定すればそれに応じて温度が変化するような仕組みは水道水に対して設計されており、温泉では無理なのだそうです。また、電気設備は潮風で簡単に錆びてしまうので簡単には導入できないのだとか。

 そんな時、ダイビングサービス脇の斜面に、謎のパイプ・オブジェが突如登場しました。

 上の写真にあるように、源泉からパイプを通って送られて来た温泉は、この場所で温泉丸と地元の他のお店への経路に分岐されます。そこへ、3m四方ほどの金属管のグルグルが設置されたのです。これもブルー隊員の製作によるものです。温泉丸に送られる湯を一旦この金属パイプに通す事によって放熱し、湯を最適温度にしようとするものです。ま、金属工作上の詳しい技術はまもなくブルー隊員のサイトで解説されることでしょう。でも、

「なるほど、季節によってこの迂回路のパイプ長さを変えれば温度調節も易しそうだな。こりゃあ安上がりな工夫だ」

と僕も感心しそうになったのですが・・。試しにここに湯を通してみると、なんと湯温は僅か1℃しか減少しなかったのだそうです。今は、湯温を20℃近く下げたいのです。その為にはパイプをもっともっと伸ばしたり、放熱フィン付きの高価なパイプを用いる必要があるでしょう。そうなると一転、

  「やっぱりなぁ。ブルー隊員の工夫なんて所詮そんなもんなんだ」

と僕も急に無責任な野次馬になってしまったのでした。

 と思っていたら、今度は突然こんなものが登場しました。

 これまでは温泉丸に直接注ぎ込まれていた湯を一旦上に上げてシャワー状に出しているのです。しかもそれを竹箒の先の様なものに当てています。こうして湯を小さな液滴にして空気との接触面積を増やして温度の低減を図っているのでしょう。そして、何と、こんな簡単な設備で20℃近い湯温の低下に成功してしまったのだそうです。

  「ええっ? こんなもので?」

と驚いてしまいました。

 「竹箒の先の様なもの」と書きましたが、ブルー隊員に訊いてみると、これは「の様なもの」ではなく、まさしく竹箒の先を切ったものなのだそうです。なるほど、そう言えば、港の隅に竹箒が何本も不自然転がっていました。

 しかし、この竹箒の効果は意外と低いのだそうで、湯温低減に一番効果があったのはシャワー部だったんですって。

  「電気などの何らのエネルギーも使わずにこれはよく出来てるなぁ」

と今度こそちょっと感心です。この辺りの詳しい事もブルー隊員の近々の報告をご覧下さい。

 でもね、正直言うと、僕が本当に感心したのはこのシャワーの下に設けられた「ししおどし」でした。先の写真をご覧下さい。斜めに立てかけた竹筒が写っているでしょ。高級料亭なんかでカコーンと音を響かせているあれです。

こんなもの湯温低減には全く何の関係もないのですが、関係ないものに力を注ぐのが文化というものじゃないですか。ブルー隊員によると、いい音を得るのに7本もの試作品を製作したのだとか。そこで、ご本人の薀蓄にちょっと耳を傾けてみると・・。

 このししおどしは節3本分の長さなのですが、実は実際に湯が入って行くのは一番上だけなのだそうです。

  「へぇ〜、節は全部抜いて竹筒一杯に湯が入っているのかと思ってた」

そして、湯の入っていない下2節分もそれはそれで役目があるのだそうです。実は、音や響きは湯が入らないこの2節が決定しているんですって。

 そこで、この下の節を見てみると、上の写真の様に小さな穴が開けられています。バイオリンの f 字孔の様にこの穴の位置・大きさなどで音色が変化するのだそうです。

  「なるほど、なるほど」

と言う事で、温泉の温度管理には全く何の関係もないこのししおどしを僕はいつまでも飽きる事無く眺めているのでした。4〜5分に一度、カコ〜ンという涼やかな音が港に響きます。

 では、汗の止まらない8月、富戸のししおどしで暫し涼んで下さい。

温泉丸ししおどし Windows Media

2007/08/06 記

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