第233回  富戸ナッチ - その4
富戸ナッチ-その3より続く

 富戸の港でフィボナッチ数列を探そうというお話、いつも通りと言うか、無駄に長くなってしまいました。先を急ぎましょう。まずはこれをご覧下さい。


 これは、今年6月に港で見られたアジサイの葉っぱです。茎の一点から向かい合う2枚の葉っぱAが出ています。そして茎を伸ばしてその上にもう一組の葉っぱ B を出す時、アジサイは一工夫凝らすのです。A の真上ではなく、90°回転させた位置に葉を付けるのです。更にその上に葉っぱ C を出す時にはもう一度 90°回転させ A と同じ位置に戻って来ます。つまり、アジサイは2枚1組の葉っぱを90°ひねって出しながら上へ上へと伸びて行くのです。

 これは恐らくこういう訳でしょう。アジサイの様に幅の広い葉っぱが2枚1組で出て来る場合、 A の上に B の葉が被さるように伸びて来たら A の葉っぱは B の陰になって日光を十分に受ける事が出来ないでしょう。光は植物のエネルギー源ですから、それでは成長に支障を来たす訳です。それ故、それぞれの葉っぱが最も有効に光を受けられる様に 90°ずつのひねりを加えているのだろうと思います。これは僕の素人考えに過ぎませんが、大きく外れてはいないでしょう。

 こうして改めて植物の葉の付き方を見ると種類によって様々なパターンがある事に気付かされます。アジサイでは茎の1点から2枚1組の葉が出ていたのですが、1点から1枚しか出ない植物について見てみましょう。下の写真は港の一角に生えていた名前も分らない草です。


 この葉っぱにはアジサイの様な規則性はなく、出鱈目に適当に生えているだけの様に見えます。ところが、よく見ると・・。例えば上の写真の A の葉に注目してみましょう。この葉から茎を辿って上に上って行くと、B の葉が A と丁度重なる位置に生えている事が分ります。そして、この B から少し上に上るとやはり重なる位置に葉があります。そこで、この A から B への葉の推移を見てみましょう。


 A の葉の上にあるのは少しひねった位置の 1 の葉です。その上にあるのは更に回転した位置の 2。そうして同じ方向にひねりを加えながら3、4 と移動して、5枚目の葉が元の A と重なるBとなります。試しに、この B の位置から葉っぱ5枚分上に上昇すると、やはり重なる位置の葉っぱが現れます。


 よって、この草は、

  回転して 枚の葉っぱ分上昇した所で葉の位置が重なる

様にデザインされていたのです。つまり、

 360°x 2 / 5 = 144°

の角度ずつひねりを加えながら上へ上へと伸びている事になります。全く出鱈目に葉を付けている様でいてこんなに巧妙な仕組みが隠されていたのですね。

 では、また別の草を港の中で探してみましょう。


 これも港の隅に生えているアロエです。これには明瞭な茎は見難いのですが、厚い葉が一枚ずつ放射状に生えているのが分ります。そこで、これを上から見ると・・・、

 上の写真の 0 の位置の葉っぱに注目して、ここを出発点として葉っぱを上へ上へと上って行くと、

  回転して 番目の葉っぱで

元の 0 の葉っぱと重なりました。

 つづいて駐車場の脇に生えていたこれ。


 葉っぱの伸び方が複雑なのでシールでマークしながらの追跡となりました。すると、これは、

 5 回転して 13 番目の葉っぱで

重なることが分りました。

 以上の結果をまとめてみると、葉っぱの重なりが見られるのは、

  回転して 番目
  回転して 番目
  回転して 13 番目

という数字の組み合わせでした。植物の葉の付け方には様々ありますが、「体をねじりながら葉を一枚ずつ伸ばす」という植物で上記以外のパターンを港では見つける事ができませんでした。

 さあ、ここでフィボナッチ数列を思い起こしてみましょう。

 1 1 2 3 5 8 13 21 44 ・・・・

と繋がる数字の列です。なんと、上で赤文字で示した数字はすべてフィボナッチ数列上の数ではないですか。このような葉っぱの生え方の規則性は広く研究されており、シンパー・ブラウンの法則という名前まで付いているんですって。

 「なぜこんな所にフィボナッチ数列があるのだろう?」

というのは不思議なのですが僕にそんな事分ろう筈はありません。でも何だか面白いじゃないですか。植物と言えば今までは花にしか興味がありませんでしたが、葉っぱでこんなに遊べるとは思ってもみませんでした。

 こうなると、数列上の13以上の数字を持った植物も見つけたくなってしまいます。この頃では富戸の港だけではなく、見慣れぬ植物をみつけたらついつい葉っぱを数えてしまうようになりました。先日は、会社へ行く道すがらの空き地にしゃがみ込んで葉っぱを数えておりました。すると、近所のおばさんが、そっと心配そうに近づいて来て

 「あの・・何か事件なのですか?」
 「へっ?」

いかんいかん、僕も何か危ない人の様に見られ始めてるみたい。まっとうな社会人としての王道を歩まねば。

 「いえいえ、本日の捜査は終了です。ご心配なく」

と訳の分らない事言って足早にその場を後にしたのでした。


参照:

 「生物界の左と右」、根平邦人、共立出版

2006/09/13 記
  

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