第305回  ウナギ 地球環境を語る魚

井田 徹治 著

岩波新書 刊

ISBN: 978-4-00-431090-7

\ 740 + 税

2007/08/21 初版発行

226 頁

縦x横x厚; 17.4x10.6x1.0 cm

 ウナギの生態から研究の歴史、そして水産資源としての側面、さらにそれを取り巻くグローバルな流通事情や環境問題までかなり満遍なく取り上げられ、ウナギを知る上では今の所一番よい一冊ではないかと思います。

 本書の中で繰り返し取り上げられているのは、「世界中のウナギを食い尽くす日本」の姿です。今や、世界中のウナギの70%近くが日本に集まって来るのだそうです。そう言えば、僕が子供の頃にはウナギと言うのは贅沢な食べ物でしたが、今ではパック詰めされたウナギが1年中スーパーマーケットに並んでいます。正しくその通り、1990年代から日本のウナギ消費量は爆発的に増大したのだそうです。それを支えたのがウナギの養殖技術の進歩です。しかし、ウナギを卵から育てる技術はなかったので、子供のウナギ(シラスウナギ)は河口で採取してくるしかなく、肝心の資源は天然のウナギ頼みなのです。

 ところが、自然の河川環境の激変、乱獲などで日本のウナギ資源は激減します。そこでそれを補うように、日本よりも早い季節にシラスウナギが回遊して来る台湾での養殖が伸張し、それはすぐに中国に広がって行きます。が、それでもシラスウナギの資源量は直ぐに低下し、遂にヨーロッパからシラスウナギを輸入するようになりました。シラスウナギが高価で取引される事が知られると、中国への輸出用(つまりは日本での消費用)にシラスウナギの確保にギャングが暗躍するような事態にまでなり、ヨーロッパにおけるウナギ資源の枯渇はアジアより深刻なのだそうです。ウナギの禁漁を打ち出そうとする国も出て来たのだとか。

  「日本人のせいで・・」

と言われても仕方ない面は確かにある様に思えます。しかし、

  「美味いものを安く食べたい」

と言う人間の欲は如何ともし難く、そこへお金が動くという経済原則も否定できません。直ぐに有効な手立てはないのかなと、少し暗い気持ちになります。個人的には、ウナギは贅沢品でいいのではないかと思うのですが。富戸のアジとスルメイカだけでも美味しいし満足出来るよ。

2008/08/16 記

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