第304回  「脱出したい!」のココロ

爆笑問題・塚本勝巳 著

講談社 刊

ISBN: 978-4-06-282619-8

\ 780

2008/07/30 初版発行

140 頁

縦x横x厚; 17.3x10.9x1.2 cm

 関東地方では、毎週火曜日の午後11時からNHKで「爆笑問題のニッポンの教養」と言う番組を放送しています。これは、様々な大学や研究機関の色んな分野の研究者を爆笑問題の二人が訪ねて、「知」の最前線を分り易く引き出そうとするものです。中々面白くて、時間がある時には僕も見るようにしています。これまでのところ、自然科学系の学者さんが出て来た時の方が、素人ならではの太田光の突っ込みが冴えて面白かったように思います。この番組は恐らく評判も良いのでしょう、NHKは各回の内容を1冊の本にまとめて出版しています。

 そこで、今回取り上げるのが「うなぎ学」の世界的権威、塚本勝巳さんが登場した回のものです。この放送は僕もテレビで見ました。

「ニホンウナギは日本の遙か南方、グアム島付近の海中にそびえる高山で新月の夜に産卵する」

と言う事をほぼ突き止めた方です。想像されるその光景がとてもロマンチックな上、日本人の食卓にも馴染みの深いウナギが主役であるだけに、この話は比較的よく知られあちこちで取り上げられる機会も多い様に思います。ところが、どの様な研究の歴史に則って、どうしてそこに産卵場所があると考え、どんな方法でどの様に捜査を進めて行き、その結果をどの様に分析したのかを詳しく書いてあるものが僕が探した限りではないのです。この塚本先生自身がそこを詳しく解説した本もありません。

「こんなに広大な海の中にある産卵場所をピンポイントでみつけたんだぁ〜 へぇ〜」

と誰しも思うだろうに、それを「どのようにして」と突っ込んで呉れる人が居ないのです。ウナギの生態も不思議な限りですが、それを突き止めた方法論にも不思議を感じないのでしょうか。

 だからこの番組の日、僕は爆笑問題の突っ込みに期待するところが大でした。ところが、結果はがっかりでした。この回では、

  「ウナギがグアム島付近で産卵する」

と言う事は研究結果の事実として話がすすめられ、本題は

  「なぜウナギはそんな長い旅に出るのか」

に移って行き、その本質を松尾芭蕉の奥の細道にもある「そぞろ神」に求めて行くのです。

  「なんだかなぁ〜っ」

僕はテレビの前で口を尖らせていました。そんな抽象概念の遊びとも思える所に突っ走らないで、まず不思議な事実を確かめる所に集中してほしかったのです。

「生まれたてのウナギの子供は本当にそこにしかいないの? 何でそう言い切れるの?」

と言う事にこそ太田光にネチネチ絡んで欲しかったのでした。ウナギが回遊する理由を想像する事はかっこいいだろうけど、その結果をどの様な観察と論理で組み立てていったのかと言う過程にこそ科学の醍醐味があるだろうと思うからです。それは難しい物理学の理論でもないので、素人の素直な疑問をぶつけ易い問題だと思うんだけどなぁ〜。

 爆笑問題ぃ〜。直ぐに哲学的な話に持ち込もうとせずに、素人の感じる具体的な「?」を武器にもっと研究者に絡んでくれよぉ〜。

2008/08/05 記

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