第300回  南氷洋の捕鯨

山田 致知 監修

岩波写真文庫 刊

ISBN: 978-4-00-028206-2

\ 700 + 税

2007/09/27 復刻初版発行

64 頁

縦x横x厚; 18.2x12.7x0.4 cm

 1950年から58年にかけて、岩波写真文庫と言う文庫本サイズの写真誌・計286巻が刊行されました。当コーナーでも、その中の「貝の生態」と言う一冊を取り上げた事がありました。内容の充実度もさることながら、50年以上昔の本の中に写っている小学生の姿などに、

  「うわぁ〜、レトロ〜」

などと妙に興奮したものでした。ただし、その時は古書として探し出して購入したものでした。

 しかし、このシリーズに「時代の記録者」としての価値を感じる方は多くおられるらしく、赤瀬川源平さんが10巻を選んで復刻版として装いも新たに発刊したのでした。本書はその中の一冊で、戦後間も無い頃に、南氷洋に向かった捕鯨船の半年に渡る航海の記録です。

 まず始めに驚いたのは、当時の船団の大きさです。僕は、大きな捕鯨船が1隻で大型クジラを獲りまくると言うイメージを抱いていたのですが、とんでもない、15隻以上の大船団だったのですね。それだけに、積荷の量も半端ではなく、燃料3,300 万キロリットルと言う莫大な量なのはもちろんのこと、ゴム長靴2750足、軍手17,00 双、更に、酒127樽 なんて言う記録まで記されています。

 日本から南極までは1ヶ月もの長旅なのですが、大型船とはいっても狭い世界で生活を続けるのですからそのストレス発散という意味もあるのでしょう、甲板に土俵を拵えての相撲大会、運動会の様子も納められています。そこに写っているオッチャン達の

  「ガハハハ〜ッ」

と言う笑顔が、近頃の日本人には見られなくなった表情でとても印象的でした。

 さて、肝心の捕鯨の様子です。砲手が仕留めて、それを母船に引き上げ、多くの人がそれを解体してという様子がリアルに描かれています。現代と言う時代ではその事が是非の議論の対象となるのでしょうが、素直に、

  「男の仕事だなぁ〜」

と感じ入ってしまいました。確かに勇壮さが溢れた作業です。仕留めたクジラの上に乗ってポーズを取っているおじさんの気持ちはよくわかります。また、クジラの胃の中から滝の様に溢れ出したオキアミの莫大な量には圧倒されます。

 しかし、本書の中でもすでに「クジラの乱獲」が取り上げられています。50年も昔の事です。クジラを取り過ぎている事はこの時点で多くの人が分かっていたのでしょう。資源管理の面でも、政治的な判断の面でも、環境保護の面でももう少し賢い判断が下されていればなぁと改めて残念に思うのでした。

2008/06/16 記

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