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北岡 明佳 著 化学同人 刊 ISBN: 978-4-7598-1301-2 \ 1,400 + 税 2007/01/20 初版発行 194 頁 縦x横x厚; 18.6x13.2x1.7 cm |
例えば、こんな事を不思議に思った事はありませんか。
海の中には、自然環境に似せた上手いカモフラージュで捕食者の目を逃れている生き物が沢山居ます。汚い岩そっくりのカエルアンコウは僕の節穴の目では中々見付けられませんし、海藻そっくりのカミソリウオはそれと気付かず通り過ぎてしまいますし、トサカにそっくりのイソコンペイトウガニは指差されても何処に居るのか分からないと言った具合です。
これらの生き物の姿形は、ダーウィンさんの言う所に従えばこんな風に出来て来たと言う事になるのでしょう。つまり、カエルアンコウの大昔の祖先の内、岩やカイメンにたまたま似た個体が捕食者の目を逃れて生き延び、それら同士がペアになる事により居住環境に似た子孫が更に広がって行ったと言う訳です。つまり、敵の「目をごまかす」術を持った者が生き延びて繁栄したと言う訳です。
「それじゃぁ」
と僕は不思議に思うのです。
「目の錯覚を利用したような姿や模様の魚はどうして自然淘汰の中で生まれて来なかったのだろう?」
例えば、目の錯覚と言えば必ず下の様な図が例として出てきますよね。

この図には「ミュラー・リヤー錯視」と言う小難しい名前が付いているそうです。お馴染みの様に、横棒の長さは同じなのにどう見ても下の方が長く見えます。一方、海の中では魚が自分達の体の大きさを競い合っている姿をよく見ます。1匹のメスを争って互いを誇示し合うオス、縄張りに入って来た他の個体に対してヒレを広げて威嚇する個体、或いは捕まりそうになるとプッと膨れるフグなどです。もし、体を大きく見せることが生き残りや子孫を残す事に有利に働くのであるとすれば、「体を実際より大きく見せる工夫」の魚が進化の過程で産まれて来てもいいのではないでしょうか。
たとえば、こんな模様の魚は、どうして出て来ないのでしょう。

他の生き物からは
「ううっ、こいつデカイ」
と一目置かれる事になります(ならないかな?)。この模様が強調されればされるほどメスからは、
「ま、大きくて素敵」
と熱い眼差しを受ける事が出来る筈です(出来ないかな?)。でも、「目の錯覚」を利用した海の生き物なんて見た事がありません。何故なのでしょう。何らかの理由でそんな突然変異が生じなかったのでしょうか。それとも、そんな模様を持った魚が現われたとしても、生存と繁殖には何ら影響しなかったのでしょうか。
そんな事を考えながら本書を手にしたのでした。そして、一読して
「なるほどなぁ」
と思ったのは、「錯覚」と言うのは「心理学」つまりは「脳」の分野の話であると言う事です。だから、人間とは全く異なる脳を持つ魚類は、ひょっとしたら上に挙げた2本の線を見ても、
「どちらも同じ長さじゃないか」
と判断しているのかも知れません。果たして本当にそうなのかなぁ。「魚にも錯覚はあるのかどうか」って比較的簡単な方法で調べられる様に思うのですが、そんな事誰も調べた人は居ないのでしょうか。
と、余談が長くなりましたが、本書はそうした様々な錯覚を産む図形とその心理学を扱ったものです。ただ、錯覚の心理学と言っても、
「こんな錯覚を産む図形にはこの様なパターン上の共通点がある」
と言った事が紹介されてあるだけで、何故その様なパターンだと人が錯覚するのかと言う所までは解説がありません。恐らく、そんな所までまだ研究は行き着いていないのでしょうね。
それにしても色んな錯覚図形があるものです。それらが次から次へと出て来ます。ただし、それら一つ一つにそれを発見した人の名前が着いていて「xxx錯視」などという名称が次々と列挙されるのは、読んでいてちょっとウンザリしました。また、
「これは私が見出した」
的な表現がちょっと多いのも鼻に付きました。でも、そんな文章はすっ飛ばして様々な絵を見てるだけでも楽しめました。
そして、本書の特徴は、読者がオリジナルの「錯覚図形」をデザイン出来るような指南書としても役立つ点です。そこで、僕も簡単なドロー系ソフトで画いてみました。これは、「ホワイト効果」と呼ばれる図です。

上の図の2つの矢印で示した灰色部はどちらも同じ色・同じ明度なのです。でも、どう見ても右側の一連の灰色の方が濃く見えますよね。キタマクラが見たらこれも
「どちらも同じ灰色です」
と言うのでしょうか。
2008/02/02 記
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