第271回  フィールドの寄生虫学

長澤 和也 編著

東海大学出版会 刊

ISBN: 4-486-01636-X

\ 2,800 + 税

2004/01/20 初版発行

356 頁

縦x横x厚; 21.0x13.5x1.8 cm

  「漸くこんな本が出て来たかぁ」

の思いがしました。魚やエビ・カニ、イカ・タコに付いている寄生虫を見つけると、まず疑問に思うのは、

  「こいつは一体何ていう名前の生き物なんだ?」

と言う事です。しかし、それを正確に調べられる図鑑はなさそうです。仮にあったとしても海の中の姿を見ただけでは分からず、顕微鏡で微細な部分を調べなければ同定できない様な世界なのだと思います。

 そこで、

  「これら寄生虫は一体どんな風に産まれて育って殖えているんだろうか」

と言う事に興味が移った時、それにも十分に答えられる本はまだ少なかったと思います。そんな中、今回ご紹介する本の編者である長澤和也さんは、

  「水生の寄生虫の世界を何とか広く知って貰いたい」

との熱意を持って、地味な本をかなり粘り強く書き続けてこられました。この本は、そうした努力の一つの集大成であると思います。この分野の様々な研究者の方が明らかにしてきた「寄生虫の智恵」と言ったものを感じる事が出来ました。

 例えば、或る寄生虫が

  「こいつに付いてやれ」

貝の中に潜り込んだところ、異なる種類の寄生虫とそこで出合った時、この2種はどういう作戦を取るでしょうか。或るものは、「共生しよう」と言う道を探るのに対し、或るものは「相手を食ってしまう」し、そしてまた或るものは「相手の寄生虫に寄生してしまう」という究極の手段を選択するのです。一体、そんな智恵は何処から出てくるのでしょうか。

 また、シャコの体表に付く寄生虫の場合。甲殻類は脱皮しながら成長するという特徴があります。では、折角体表に付いたのに、大家のシャコが脱皮してしまったら寄生虫はどうすればよいのでしょう。殻と共に捨てられてしまうのでしょうか。実は、ここにも寄生虫の智恵があるのです。

 寄生虫は僕にとってはまだまだ茫漠たる闇の世界ですが、そんな中にも確かな明かりがポツンポツンと灯り始めているんだなと実感できる一冊でした。

2007/11/08 記

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