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桑村 哲生 著 海游社 刊 ISBN: 978-4-905930-14-3 \ 1,600 + 税 2007/08/25 初版発行 168 頁 縦x横x厚; 18.8x13.2x1.5 cm |
今、富戸の海で産卵期真っ最中のホンベラやニシキベラなどの様に、魚類の多くは卵を水中に産みっ放しにしています。その一方で、セダカ・ソラ・マツバ・クマノミなどのスズメダイの仲間や、ホシノ・クロイトなどのハゼの仲間は卵をそれぞれの場所に産み付けてそれを孵化するまで守ります。しかも、殆どの場合それはオスの役目なのです。
「なぜオスが卵を守っているの?」
かは、母親の子育てと言う役割に馴れた我々には不思議な現象です。
当コーナーの第153回で桑村哲生さんの「魚の子育てと社会」と言う本をご紹介しました。これは、これまで、魚の子育てと言う事に焦点を絞った唯一の本でした。そこで、僕はこの様に書きました。
「でも、残念なのは、「どうしてオスが卵を守るの?」という問いに対してはそれらしい説明があるだけで、「なるほどっ」と胸にストンと落ちるような答えは出て来ない事です。それには、更に15年後の著者の本を待たねばならないのかも知れません」
しかし、15年も待つ必要はなかったのです。最新の知見を沢山加えると共に大幅に加筆された本がこの度「子育てする魚たち」として発刊されたのです。以前、長谷川眞理子さんが「クジャクの雄はなぜ美しい?」と言う本を同じ様に大幅に改訂して発刊した事をお伝えしました。多くの人に読んで欲しい本がこの様に発展するのは大歓迎です。特に、本書の著者の桑村哲生さんは、長谷川眞理子さんや本川達雄さんと並んで、専門分野を非常に分かり易く解説して頂ける研究者です。
さて、出来立てホヤホヤの本を早速読んでみました。
今回は、様々な魚の生態写真が前著よりも沢山掲載されていて非常に親しみ易い造りになっています。しかも、魚の子育てを巡る今まで聞いた事のなかったお話もあり、
「ほほ〜っ」
と唸る場面もありました。
また、全体の話の流れも、前著よりは整理されて分かり易くなったと感じました。動物の子育ての背景・進化論的解説
→ 魚の子育ての分類 → 配偶システムと子育ての理論的な関係 というストーリーは頭を整理しながら読み進むにはよい造りだと思います。
今回は、特に後半の配偶システム(一夫一妻か、一夫多妻かなど)と子育て(産みっ放しにするのか卵を守るのか)、そして性的役割(オスが卵を守るのかメスが守るのか)を関連付けて整理してまとめた上で、それを論理的に説明しようとする部分には著者の強い熱意の様なものすら感じられました。非常によく出来ているなと思う反面、やはり話がかなり複雑で、特に数学的モデル(ゲーム理論)を用いての説明が出て来ると、何度も
「そうかな?」
と立ち止まって考えてページを前後する事がありました。それで、結局、
「どうしてオスが卵を守るの?」
と言う問いに答えられる様になったのかと言うと、
「う〜ん・・・・ 分かったような、分からぬような」
と言うのが正直な所です。理屈は分かった気はするのだけれど、それが海の中で実際観ている様子とカチッと繋がった実感が持てないのです。いやいや、これは決して本書の責任ではありません。
「スズメダイはどうしてオスが卵を守っているの?」
と疑問を感じたダイバーがまず最初に手に取るべき本である事には変わりありません。
2007/08/23 記
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