第191回 カマキリは大雪を知っていた


酒井 與喜夫 著

農村漁村文化協会 刊
ISBN: 4-540-03114-7

 \ 1,650 + 税

2003/10/05  初版発行

176 頁

縦x横x厚; 18.3x12.8x1.0 cm
重量; 190 g
 

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 天気予報では今晩から明日の朝にかけて伊豆地方は「雪」と言い切っていました。また、昨日も伊豆の海岸で積雪が見られたのだそうです。

 「やれやれ」

週末の明日から富戸行きを予定していた僕は溜め息です。器材等をバイクに積んで移動する僕は雨は気にしないのですが、雪には流石に太刀打ち出来ずギブアップです。明日は部屋で何をしようと考え始めました。

 でも、こんな僅かばかりの降雪で文句を言っていては雪国の人に叱られてしまうでしょう。特に、今冬は記録破りの積雪が各地から伝えられています。そこで、今回は緊急に本書のご紹介です。

 カマキリは夏から秋に掛けて木の枝などに卵を産み付け、それは冬を越して翌春に孵化します。ところが、このカマキリの卵について東北地方では

 「カマキリが高い所に産卵すればその年の冬は大雪」

との言い伝えがあるのだそうです。つまり、カマキリは冬にどの程度雪が積もるのかを前もって知っていて、卵が雪に埋もれて窒息しないように産卵場所を決めるというのです。何だか眉唾な話に思えますよね。では、その言い伝えは本当なのかを調べてやろうと言うのが本書の狙いです。

 著者は生物や気象の専門家でも何でもなく、電気・通信分野の方です。それが知らず知らずカマキリの謎に魅入られて、遂には毎年千箇所以上もの観測点でカマキリの産卵位置を記録し、それを何年も継続する事になるのでした。そこには、豪雪地の新潟で暮らす筆者の積雪予想への強い思いがあったのでしょう。

 その結果、卵の位置は確かに積雪量と対応すると言う事が確かめられたのでした。それを調べていくプロセスが本書ではまだ十分には分からない点もあるのですが、論文として発表もし、本テーマで博士号も取得されているそうなので、確からしいと考えてよいでしょう。著者は、ご自身の研究成果を元に、「今年の積雪予報」を出すまでになったのです。

 ところが、著者の興味はそこにとどまらないのです。

 「じゃあ、カマキリは何を手がかりに積雪予想をしているのだろう」

という点に研究の対象が移っていくのです。その結果、

 「樹木が発する低周波振動が産卵位置を知らせている」

と言うことに気付くらしいのですが、その辺は直接本書をご覧下さい。ただ、その振動の解析の結果、地震予報までもが可能になって来たという話にまでなってくると、正直言ってちょっと胡散臭く感じられて来ました。

 恐らく著者はとっても面白い方だろうとは思いますが、どうも本書に僕は感情移入し辛い面があります。それは、

 「へぇ、カマキリってこんなに面白い生き物なんだ。もっとこの生き
  物の事を知りたい」

という素直な驚きよりも、著者の力点が

 「積雪予報の精度を如何に高めていくか」

と言う事に置かれているせいではないのかなと思います。

 さて、話を元に戻しましょう。今冬は各地で積雪記録が塗り替えられています。著者の地元の新潟でも同様だろうと思います。となると、この冬こそ「積雪予報」の真価が問われる時であった筈です。以下のHPにおいて、10月時点での著者の予報が発表されています。

http://www.web-do.jp/sakaimusen/hellear/winter2005/image/winter2005.pdf

 例年の積雪平均値と比較して今年の予報値はさほど高くないように見えます。かなり外してしまったのではないでしょうか。一冬を終えて最終集計値を見ないと何ともいえないのですが、でも今の時点で

 「はずれた、はずれた」

とは言いたくありません。もし、外れてしまったならば筆者は予想法をもう一度練り直して来るでしょう。そして、外した時の批判を承知の上でそれでも毎年予報を出し続ける筆者の心意気を買いたいからです。

 こんな難しい予報に比べると僕の「ナマコの産卵予想」なんてかわいいものです。

2006/01/07 記 
  

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